世田谷区 深沢の家 旗竿狭小地に建てた表情豊かな自然光が生み出す木造三階建の住まい
暮らしと詩情
込み入った住宅地のその奥の、四方を囲まれた小さな旗竿地に建つ木造三階建て。斜線制限と日影規制に従い北側は二階分、南側は三階分の高さ。北側と北西側の斜線制限によって建物はスライスされ、そのスライス面がそのまま屋根となり天井になった。
厳しい与条件に適切に対応しながら、家の中を路地や小径、その先にある開けた中庭を気軽に散策するような場としてとらえ、明るく楽しい空間として実現した家。
この計画の途中プロセスやスケッチ、模型写真などを以下のページに公開しています。
すまいの計画50選 No.50 旗竿地に計画した狭小都市型の木造三階建て住宅
深沢の家
木造 / 3階建て / 住宅 / 新築 / 東京都世田谷区 / 2017
設計・監理:小形 徹 * 小形 祐美子 プラス プロスペクトコッテージ 一級建築士事務所
構造設計:ASD 田畠隆志 / 設備設計:株式会社創環境設計 波田野善政 / 施工:柏倉建設株式会社
コンパクトな玄関。壁には床から浮かんだ靴箱。
玄関ドアから直接内部が見えないように配慮した。
円弧状の壁が家の中に導く。
一階には小さな個室を二つと浴室およびトイレを設けた。
傍らに独立した洗面台。必要に応じてカーテンで仕切ることができる。その先に二階への階段が続く。
二階に至る階段は洞窟か胎内巡りのような雰囲気。
二階は一転して明るくすがすがしい空間。随所に開けられた窓や天窓から光を採り込み、通風のための窓も家の周囲の状況を適切に読み取った上で効果的に配置した。
二階はLDKの他、キッチンに隣接する洗濯・家事コーナー、トイレと物入れを設けた。
傾斜天井の一室空間の中に張り出した部屋や床、それらを支える柱などが現れ、立体的で豊かな表情を持つLDKとなっている。
造作家具として製作した特注のキッチン。カウンターの長さは4M。
鍋やカトラリー、食器類もすべてここに仕舞う。元々持っていたものの量や大きさを測って、それらが納まるように設計した。引き出しの中のカトラリーボックスも既製品がぴったり納まる寸法になっている。
キッチンの隣に洗濯機。その先に設けたガラス戸で仕切られた室内物干し場は、南に面した大きな窓がある明るい部屋。
三階へ至る階段室面して設けた木製スクリーン。南側に向いた階段室の高窓からの光がこのスクリーン越しにLDKに届く。
建て主はLDKの立体的な形状を理解したうえで適切に家具などを配置している。
三階に至る階段途中に設けたベンチ。その上にはLDK側に張り出した床。
階段室南側の高窓からの明るい光が気持ち良いこじんまりとした読書コーナー。
傾斜天井の子ども室。
南側には高窓。LDKの吹き抜けに面する開口は必要に応じて木製引戸で閉めることができる。
階段途中からあがる床面にはござを敷いた場所ができている。子ども二人のための三階の部屋も心地よさそうに使われている。
道路側から見た外観。手前に駐車スペース、奥に玄関。二階部分の大きな窓は南側に向いた室内物干し場のもの。その上に三階から出入りするバルコニーがある。
建物が外から見えるのはこの面のみ。
大人三人と子供二人がここで暮らす。一階は小さな個室と洗面・浴室とした。二階のLDKと三階の子供室、そして階段は一つの室内環境として設定されている。空に開いた三階南側の窓からの陽光が、大きな開口を通して二階北側のLDKへ届けられる。高さと方位の異なる窓が心地良い風を室内に導く。二階と屋根裏のような三階との間は、必要に応じて木製の引戸で仕切ることができる。
玄関脇の小さな洗面台は噴水か水飲み場、階段は洞窟、三階へ至る階段途中につくられたベンチやリビングに張り出た床などは小さな庭かバルコニーだろうか。刻々と移り変わる光、陰影、造作された家具やディティールの表情などが、心が自由に広がっていくきっかけをつくり、ここに住む人の気持を生き生きとさせてゆく。
厳しい与条件に適切に対応しながら、建物は詩的な要素へと変換される。暮らしと詩情のポリフォニーが聞こえてくるような、親密な存在としての家。
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