南側の道路突き当りに建物は建つ。周囲の雰囲気の中にそっと溶け込む外観。
玄関ポーチは空へ続くトンネル。その先に以前の住人が築造したコンクリートスラブ。開けた景色と空に続いてゆく。
ポーチをくぐりぬけて北側の人工スラブ側から振り返る。路地が雁行しながら続いているような印象。ポーチは母屋から張り出した部屋の下。二階の大きな窓の先に南側の高窓。
人工スラブ側からもビルトインガレージへ出入りできる。
突き当りの窓の横に作業用流しも設置予定。壁はビスが効く高圧木毛セメント板、少しずつ棚やフックなどを充実させてゆくことを建て主は楽しみにしている。床は耐久性の高い浸透性塗装。DIYのための作業場にもなる。
接道側から入庫するアーモンド・グリーンのオールド・ミニ。
接道側の車庫出入口にはリモコン式の電動シャッター。ビルトイン・ガレージから直接玄関に出入りする引戸がある。
玄関土間から。引戸の向こうにガレージに停めたミニが見える。
玄関ホール。一階はビルトインガレージとユーティリティーのみで構成。右手の引戸の向こうにはコンパクトにまとめたトイレ・洗面室・浴室がある。
階段の先の光に誘われて二階へと上る。
二階は天井の高い明るく開放的な空間。構造躯体や構造用合板が仕上げられずにそのまま現れている粗い壁や天井。そのなかで壁紙や和紙の面が柔らかで穏やかな光を放つ。
LDK。正面の大きな窓からは、広々とした景色と空が広がる。建て主はこの景色を探し求めて何年も土地探しを続け、ついにこの場所を見つけた。手摺壁にはTVが設置される予定。
予備室は畳敷き。その下は全面床下収納になっている。奥の空色の襖の向こうは押入と物入れ。予備室とLDKの間も紙襖で仕切る。こちらは青鼠の和紙。
予備室からLDKをみる。構造躯体現しの壁面が室内に印象的な陰影をつくる。北側の大きな窓は眺めの良い景色に続き、南側の高窓からは暖かな陽光が入ってくる。高窓の下に低い天井高の台所。台所の上はバルコニー。
構造躯体現しの壁面の向こう側は個室。階段正面の個室へのドアは目立たないように壁面が連続しているように納めた。
構造躯体現しの壁面の向こう側は個室。上部に黒々とした孔。個室に浮かぶロフトへ続く。
切妻天井の大きな空間を壁と床で分割している。単純な手続きながら、明るい場所/暗い場所、広い場所/狭まった場所、高い場所/低い場所など、様々な場所が同時に出現し、そこを巡り、くぐりぬけてゆく楽しさが生まれた。
大工工事で造作したシンプルな台所。棚や収納は少しずつ建て主がDIYで製作してゆく予定。棚などを吊れるように天井下地にも十分な強度を準備している。
台所から北側に広がる眺めをみる。構造躯体現し壁の反対側は仄暗い個室。個室の北側には小ぶりな上げ下げ窓を設けた。
椅子に腰かけて本を読みたくなるような佇まい。
個室には小さな窓を幾つか設けた。光がその時その時で様々な表情を生み出す。東側の細長窓からは浦賀水道が見える。
高い天井の仄暗い空間にロフトが浮かぶ。
後日建て主が壁面いっぱいに蔵書を納める書棚を作るという。構造用合板の壁はそのための下地にもなる。
ロフトの孔からLDKをみる。
ここに扉かテキスタイルのようなものをつけても良いのかもしれない。
孔からは南側のバルコニーの先に広がる空と北側の遠くまで続く眺望を得ることができる。
階段から玄関ホールを見下ろす。
多種多様な趣味を楽しむ独身者の家。ミニを二台分置けるスペースと作業場のあるビルトインガレージ、外装は堅牢に、内部はセルフビルドで、という希望があった。建て主は、眺望の良い土地を探し求め、北側に開けた景色と空が広がり、東に海を望むこの場所を見つけ、崖上であることや崖に突き出たコンクリートスラブがあることなどの難条件を設計の工夫で克服し、実現に至った。
一階は接道側と崖側コンクリートスラブの二方向から出入り可能なビルトインガレージを中心に構成。二階は吹き抜けた切妻天井の大きな空間を壁と床で区切った、眺望窓のある明るくゆったりとした居間と台所。台所の低い天井の上はバルコニー。そこに面して南側からの陽光を室内に取り込む高窓を設けた。壁で区切られたもう一方は、幾つもの小さな窓から光が差し込む天井の高い仄暗いロフト付の個室とした。居間の一部は外に押し出され、紙襖で仕切られた畳部屋になっている。
室内はセルフビルドで作り込めるように、壁と天井の大部分は構造躯体・構造用合板の粗い状態そのままにして、家具等も最小限にとどめている。