川越の茶室 平成の二畳台目茶室設計競技 佳作入賞
木立の中の庵
木立に呼応するような木羽板葺きの四角錘の屋根が、内部の二畳台目の茶室と水屋をおおう。
内部の各所にアルコーブや開口部、天窓などを設け、あかりとりや行灯とした。
外部には立礼席を設け、大きな鉄製の扉を開閉することで、客座・点前座と立礼席とを連続させることを可能にする。
おおいの内部は漆喰塗りのやわらかな空間、選び取られた光と川越のときの流れを映しだす。
外露地から内露地へ、庭園から茶室の空間へ、ランドスケープの変化を身体的に経験できるような設えとした。
木立の中の庵 川越の茶室
計画案 / 茶室
木造 / 平屋建て / 埼玉県川越市 / 2000 / 設計競技応募案
設計:小形 徹 * 小形 祐美子 プラス プロスペクトコッテージ 一級建築士事務所
平成の二畳台目茶室設計競技 佳作入賞
木立の中の庵へ
木立の中にたつこの庵には
まわりの樹形と呼応するように
四角錐のおおいがかぶされている。
おおいは、木羽板葺。
地表面近く垂れ下がったおおいの一角が
大きく切り取られ
桜色の土壁がのぞき
一方には躙口が
もう一方には、貴人口が設けられている。
二畳台目というこの庵の内部には、
最小限必要な要素が選び取られ、配された。
それらを包み込むように
四角錐のおおいが、平面の四隅からずれて
かぶせられた。
そのため各所に、アルコーブや開口部が
つくりだされた。
おおいの頂点に開けられた小さな開口部からは
天空のやわらかな光がおおいの内側をつたう。
おおいは、光を内包し、陰影をつくりだす。
四角錐のおおいの一端が
床の間の東端に届き、床の間の正面の壁の背後には
三角形のあかりとりがつくられ
点前畳の左側のアルコーブには
あかりが埋め込まれ、
行灯のかわりとなる。
西面に点前畳より突き出された洞庫からは
その戸を取り外すと簾越しに
坪庭を見ることができ
貴人口側の鉄製の扉を開け、障子を取り外すと
瓦敷きの立礼席と垣根越しに広がる木立を望むことができる。
このおおいの内側は、漆喰に塗られ
二つの背景としての意味をもつ。
一つは、選び取られた要素と光に対して、
もう一つは、川越のまちの時の流れに対してである。
貴人口に面して設けられた瓦敷きの土間は
鉄製の扉を開け放ち
貴人口の障子と点前畳に置かれた屏風を取り外すと、立礼席になる。
またこれらの扉を閉じ
土間の端に立つ石柱を床柱と見立てることで
築山と木立の中での野点が可能となる。
その場合のために水張り口を二つ設け、対応する。
アプローチについて
回遊式の庭園の途中に
外露地として瓦敷きのプレートが広がり
足元に伝わる感触が変化すると
竹の塀に囲まれた腰掛待合がある。
延段を通り、中門を潜ると、
飛石の内露地になる。
飛石は、蹲へ、躙口へ、貴人口へ、そして水張り口へと続く。
川越市内の寺院の庭園に建設する茶室の設計競技
「平成の二畳台目茶室」において提案した計画案。
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