群馬県中里村新庁舎 設計プロポーザル 佳作入賞
木霊と舟
「こだまの広間」は中里村一帯のための、"大きな居間"として機能するだろう。
そして、そこに響く木霊こそが、自分たちの生きてきた痕跡であると、誇りに思う時が来るだろう。
その時この建築は、様々なことやひとが出会う、穏やかで豊かな場所になる。
群馬県中里村新庁舎 木霊と舟
計画案 / 庁舎
RC造+S造 / 地下1階地上4階建て / 群馬県(旧)中里村 / 2000 / 設計プロポーザル応募案
設計:小形 徹 * 小形 祐美子 プラス プロスペクトコッテージ 一級建築士事務所
群馬県中里村新庁舎設計プロポーザル 佳作入賞
恐竜の化石が出たことで有名な群馬県旧中里村の、村役場を新築するにあたり行われたプロポーザルに応募し、佳作として選ばれた計画案です。過疎化と老齢人口の増加や将来の村の姿などがテーマとなったプロポーザルでした。
道路面から直接アプローチできる「こだまの広間」は、エントランスホールであり、議会のロビー、小さな図書室、カフェでもあります。広間の床は、入口から川に向かって少しずつゆっくりと下っていき、川に面したテラスは、大型の引き戸の開閉により室内と一体化することが可能で、そこを舞台のような扱いとすることもできます。
「こだまの広間」の道路に面する大きな扉を開けると外部空間と内部空間が接続され、道路を挟んで向かい側の「バザールひろば」とも、連続することができます。このような場の転換は、それまで気がつかなかった村の空間の発見を誘発します。
これらに加え、周辺の既存施設群により構成された、この村のための"大きな家"をゾーニングし、整備すべきではないかと考えました。
※旧群馬県中里村は2003年4月より隣接する町と合併し、多野郡神流町として現在に至っています。
「場所」は、そこに出会うものを
つなぐところ 介在するところ その内側にためていくところである。
出会いはそこに響きを 響き合う心を 生み出し、
そして そこに余韻を残す。
ここで生起するものは、つねにこの場所を基点とするものとなる。
:我々は、化石となった、かつて生を営んでいたものの足跡のある岩から、
遠く時空を超えて彼らへの思いをはせることができる。
遠い昔、ここが海であった頃から、この場所は
存在してきた。
この場所は、この村で生を営むものとそれをとりまく
風景、そしてそれと共にある時間や思いをつなぐ。
この場所でおこった出来事は、
人々の心の内にとどめられると同時にこの場所自体へも刻印されていく。
光や風、季節や天候といったことによる風化作用と
同じように、ここで生起するものは、この場所の姿を
変えていく木霊となり、力となる。
この場所は、そのようなことを抱きこみ、
響きあわせることができる容器である。
と同時に、人々を遠くへ運ぶための舟、
あるいはその繋留地でもある。
人々がこの場所から離れて遠くにあるときも、この場所はここにあり続ける。
その人の心の内の木霊として。
そして、この場所は、人々を結びつける力となり、基点となるのである。
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