Archive on Po Delta / Toru Ogata ポーデルタの歴史資料館 / 小形 徹 AA Diploma Honor,RIBA Silver Medal 受賞作品
風景の記録と融合
このプロジェクトは、英国ロンドンのAAスクール、ディプロマユニット6(ユニットマスター:ピーター・ソルター )1989-1990において制作された作品である。
窓に沿って設置されたテーブルは室内の動態により位置づけられる.テープル,その表面をかいして上部と下部に焦点をあわせること,テーブルは,刻印され,その上で使用される物の残余物と痕跡の風景が埋め込められることにより,部屋自体を記録していく.
窓から差し込む光がテーブルの上に影を落としていく間に,テーブル上の破片の山の水平な風景と,その向こうにある垂直な風景とを融合していく.
ベネチアの邸宅の物質的枠組とその空間的言語を持ちつつ農業風景の中に位置しているナニ邸において,壊れた窓の中やファサードに広がった年月の経過の痕跡に農業的風景が侵入している.あたかも土地それ自体が建設の際のデイティ-ルや具体的な材料に閑する熟考に抱き込まれ,あるいは埋め込まれているようである.
計画は,今や遠く隔ってしまった過去を抑留し,もう一度ポー川の流れと土地とを繋ぎ合わせる為の図書館である.影の壁として計画されたファサードの後ろには,新たな台地やプラットフォームがあり、それぞれが埋め込まれたスペースや,空中に静止された部屋を持つ.それらは増加しつつある機械化された農業産業により不要となった器具や本を保有していく.
( Text by Peter Salter / AA Projects Review 1990 )
Archive on Po Delta / ポーデルタの歴史資料館
計画案 / 歴史資料館
Architecturl Association school of architecture, London / Diploma unit 6 / 1989-1990 / Unit Master:Peter Salter
Diploma Honor( AA優等学位 )受賞
RIBA Silver Medal ( 英国王立建築家協会 シルバーメダル )受賞
この年にディプロ マユニット6でおこなわれたことは以下のとおりである。
学生は、ロンドンの普段自分がいる場所から大切なことかもしれないと感じていることを探し出した。そしてそれを建築的な着眼点へと少しずつ発展させ、ドローイングやモデルを制作することをとおして、その着眼点を検証し、それがいかなるものなのかを明確にしていった。
それが明らかになった後、皆で一緒にイタリアのポーデルタへ旅し、ロンドンで明らかにした各自の着眼点をとおして、その場所や風土を理解し、これを学んだ。この作業によってそれぞれのポーデルタの姿が浮かびあがった。
これに続き各自が自分のプロジェクトを展開する敷地を探し出し、そこに必要なプログラムは何か、どのような建築が求められているか、そこで建築はいかなる役割を担うのか、そういったことを深く検討しながら計画を進めていった。
この一連のプロセスは、はじめに解決すべき課題が設定されているわけではない。それは自分の建築に向かう態度や立脚点、自分の物差しを明らかにするところからはじまる。しかしこれがあったからこそ、場所や風土をどのように捉えるかということに実感を持って取り組むことができた。そして何が必要か、そのための建築的提案は何かということを、一貫性を持って構築していくことができたのである。
このプロジェクトをとおして、私は建築や建築教育におけるプロセスの重要性を身をもって体験し、それを学ぶことができたと考えている。
AA files 20 /21 に掲載されています。
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