品川の家 武骨で荒らしくどこか懐かしい感触がある重量鉄骨造3階建ての住まい
素のうつわ
都心の密集地に建つ重量鉄骨造3階建ての二世帯住宅。
構造体である大きな鉄骨の柱や梁が室内にその黒々とした武骨な姿を現す。天井はデッキプレートのまま。その他の仕上げは構造用合板素地とし、床にはカラマツの無垢材を張った。
建主と共に計画を進めている中で、すこしづつこの家の空間イメージは建ち上がっていった。
「素のうつわ」というフレーズは私たちが提案し、元々あったのだけれど、この家が建ち上がりその姿を現したとき、初めてそのメッセージの本当の意味がどこからかやってきたような気がしている。
この計画の途中プロセスやスケッチ・図面、模型写真などを以下のページに公開しています。
すまいの計画50選 No.05 ごくあたりまえでシンプルな生きかたのための家
品川の家
重量鉄骨造 / 3階建て / 住宅 / 新築 / 東京都品川区 / 2004
設計・監理:小形 徹 * 小形 祐美子 プラス プロスペクトコッテージ 一級建築士事務所
構造:山崎亨構造設計事務所 / 設備:波田野建築設備設計事務所 / ダイニングテーブル:藤森泰司
施工:北沢建設株式会社
ハウスコというインターネットの住宅コンペで選ばれ、実現した住宅です。敷地は品川区内の住宅と町工場が密集する地域にあります。木造2階建て住宅を重量鉄骨造3階建てに建て替えました。1階に親世帯、2階・3階に子世帯が住む二世帯住宅です。玄関は共有とし、水周りはそれぞれの世帯に設けています。
建主はこの場所に住みこの土地を守るというこだわりを強く持っていました。そこから生まれた印象が、無骨で荒々しく、それでいてどこか懐かしいという、この建物の感触につながっていったと思います。室内には鉄骨やデッキプレートがそのまま現れ、壁面は荒削りの合板の壁と棚で埋められ、床には無垢板が敷き込まれています。そんな剥き出しの即物的な仕上げですが、同時に独特な温かみや生命感もそこに生まれています。そこに住む人を穏やかに守ってくれる親密感にも包まれていると思います。引越しが済み、そこでの生活が始まった時、あたかも彼らの暮らしが昔からそこにあったように見えました。
私たちは、コンペのときにこの建物を"「素のうつわ 」たとえれば、ごくあたりまえでシンプルな生きかたのための家"と名付けました。建主が、鉄骨造にこだわったこと、そして私たちがそれを室内に現しにしようと提案したこと、そして建主も私たちも、その鉄骨が黒く塗られるべきだと思ったそのときに、このうつわのあるべき姿が立ち現れたのだと思います。
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